統合研究規約
<背景>
我が国では高齢化が急速に進行しているが、それにともなって動脈硬化性疾患あるいは要介護状態となるものが激増している。したがって脳心事故を未然に防止することは、高齢社会の重要な予防医学的課題である。しかし、我が国では諸外国に比すべき疫学的大規模研究に乏しく、臨床ガイドラインの多くは欧米の基準が用いられ作成されている。信頼するに足る日本人固有の大規模長期観察研究は、今後の医療に欠くことの出来ない基盤となるものと思われる。
<目的>
数万以上の地域住民を対象とした動脈硬化性疾患の発症・死亡に関する疫学的研究を施行し、日本人固有の諸危険因子との関係を明らかにすること、併せて高齢者の痴呆、要介護などの要因も検討する。
<本研究の基本計画と利点>
本研究は、地域住民、職域の勤労者を対象とした長期疫学的観察研究である。すなわち対象地域、職域と対象者を特定し、、説明の上での同意を得て必要な検査を施行して後、これを登録する(厚生労働省 疫学的手法を用いた研究等の適正な推進の在り方に関する専門委員会、疫学的手法を用いた研究の在り方に関する小委員会の提示する疫学研究の倫理指針(案)(http://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1206-4.html)に従う。検査に関しては追跡期間中に繰り返し行うことが望ましい。登録は2年にわたって施行し、登録されたものは以後追跡の対象となる。脳心事故などのイベント発生はこれを漏れなく捕捉し、その確度を検討した後、定期的に事務局に報告する。登録データおよび報告されたイベントについては、その質について委員会で検討を行い、個票ベースのメタアナリシスを行う。なお、既存コホートの既に観察されたイベントの統合研究については別途計画する。本研究の利点は下記の通りである。
- 動脈硬化性疾患に関する日本を代表する信頼度の高い大規模データベースが得られる。このような規模の大きな研究は欧米にも稀である。
- 疾患発症率、障害率、死亡率に関して国内の地域別比較ならびに国際比較が可能となる。
- 日本人固有の危険因子を評価し得る。
- 個別研究の成果から統合研究と関連した新しい情報が得られる。
- 高齢化の進行にともなう要介護と痴呆の発症頻度と関連要因を解析しうる。
- 内外に広く公表されるところから日常臨床と健康管理上に有用な情報となり、EBMの実践に役立つ。
- 我が国の疫学的研究の促進に寄与することができる
- 厚生労働省の健康日本21の施策に貢献しうる。
- マスメディアを通じて一般に広くその成果を報じ、社会的問題点に注意を喚起せしめ得る。
なお、遺伝子の関与に関する研究については将来の課題とする。
<研究組織>
本研究の企画遂行にあたる委員会を設置する。これを中核として、研究組織を広く募り、意思統一を図る。各研究班はその規模に応じて、研究助成金が基金より支給される。委員の氏名は、下記の通りである。
島本和明 糖代謝
今井潤 血圧
島田和幸 イベントの判定基準(虚血性心疾患)
磯博康 脂質
久代登志男 職域
山科章 職域
豊嶋英明 職域、心電図
中川秀昭 職域
松林公蔵 ADL、痴呆
上島弘嗣 委員長、研究統括
清原裕 イベントの判定基準(脳卒中)
大橋靖雄 栄養、身体活動、研究コーディネート
(小澤 利男 アドバイザー)
<名称>
本研究は、日本動脈硬化縦断研究Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study(J-ALS)と称する。
<対象>
40〜89歳の地域住民、職域勤労者を対象とする。対象は精神的身体的社会的に自立して地域で生活し、ADL、認知機能に問題のないものとする。
<登録>
2002.1.1〜2003.12.31を登録期間とする。既に存在するデータについては、さかのぼって1999年までのものを登録可とする。登録対象は所定の問診項目(家族歴、既往歴、現病歴、嗜好、運動習慣、服用薬など)、身長、体重、血圧、血液検査(総コレステロール、HDLコレステロール、血糖)、心電図などの記録が必要である。その細部に関しては、別に定める。
<追跡期間>
登録後5年以上を目処とする。
<追跡目標(エンドポイント)>
総死亡率、心血管疾患死亡率、がん死亡率、心血管疾患発症率を最低基準とする。また、高齢者にあっては、障害率(要介護)と痴呆発症率を検索する。職域にあたっては、糖尿病、高血圧、高脂血症などのリスク要因の変化を検索する。追跡目標については、下記の通りA:必須項目、B:(発症)努力項目、C:(障害)努力項目のランクを設定する。
A)必須項目
死亡
急性心筋梗塞
脳卒中
突然死
(職域)
高血圧、糖尿病、高脂血症に関わるリスクファクターの変化を
追跡する。
B)(発症)努力項目
CABG、PTCAの既往
以下の循環器疾患での入院の既往を調査する。
うっ血性心不全
大動脈瘤
閉塞性動脈硬化
C)(障害)努力項目
以下の項目については、調査予定のコホート間で使用する指標について合意形成をはかる予定である。
要介護度
ADL
痴呆
骨折
死亡率、罹患率を精確に把握することは、本研究の最も重要な課題である。このため地域にあっては、行政、住民組織、医師会等と密接な連携を必要とする。また発生イベントに関して漏れなく捕捉し、その診断の確度を検討することが重要である。
<データ>
各研究班は、毎年登録ならびにイベント発生を所定の形式で事務局に報告する。委員会は、毎年これらのデータの質に関する問題点の有無を検討する。
<倫理委員会>
本研究の施行に当たっては、大学あるいは所属機関の倫理委員会の認可を得、かつ対象者からの説明の上での同意を得ることが必要である。なお、事務局への提出データには匿名化を行う。
<研究発表>
統合研究の発表は、毎年実施する。発表する学会、内容、学会誌などに関しては、委員会の審議を経て実施するものとする。発表に関する規約を別に作成する。
<事務局>
事務局は、下記に設置する。
NPO法人 日本臨床研究支援ユニット
Japan Clinical Research Support Unit (J-CRSU)
所在地
〒113-0034 東京都文京区湯島1-2-13 西山興業お茶の水ビル3F
TEL 03-5297-6258
FAX 03-5297-6259
|