◆今回の派遣により得られた成果*
Duke大学やマサチューセッツジェネラルホスピタル(MGH)における患者サポートの調査を踏まえ新しい形の日本での患者サポートシステムの構築をすすめた。
患者会の活動を通じて患者や患者家族から医療の一般情報だけではなく個別情報を得ることも重要であることがわかってきた。また、患者を取り囲むコミュニティはいままで言われている医療者、家族や友人だけではなく、それぞれの持つコミュニティ(学校、職場、研究者、司法、立法、メディアなど)も含めた新しい医学コミュニティを考える必要性を実感した。そして、情報だけではなく医療者との良いコミュニケーションが得られることで医療がスムーズに進むことがわかった。これは、アメリカ合衆国DUKE大学における医療情報の提供方法、MGHにおいて医療者のコミュニケーション能力向上方法を調査の結果であるが、更に、日本独自のコミュニティの構築が今後必要になってくると考えられる。
DUKE大学においては院内に複数のフリーペーパーを設置し、医療情報ばかりではなく各医師の顔写真いりの紹介などを行うことで患者や患者家族に適切な情報を伝えるとともに医療者へ親近感を向上させている。また、患者、患者家族からの投票でベストナース賞など各種の賞を設けることで患者、家族に対してのサービス向上の意識を医療スタッフに芽生えさせている。
MGHでは Schwaltz Round という症例検討会を毎月開催している。ここでは、医師だけではなく看護師やソーシャルワーカーなどさまざまな医療者が参加し、そして、症例ごとに医療者と患者、患者家族とのコミュニケーションに関しての議論を重ねる。また、この内容は The Oncologist に掲載されている。The Oncologist の Editor in Chief でありMGH の Clinical Director でもある Dr Bruce Chabner と面談し、この試みがコミュニケーションの向上のためであることなどを聞いた。
これらの内容は医療コミュニケーションにおける日本と海外との比較として、2006年第一回医療の質と安全学会学術大会にて口演発表し、その後の試みに関しては2006年看護科学学会の口演と交流集会にて発表した。
◆研究成果が移植医療,あるいは先端医療に与える貢献*
今回の調査の結果を踏まえ、日本において、患者、家族への個別情報の提供を行うとともに、医療者・患者・家族間のコミュニケーション向上させる方法として Community Facilitated Medicine の確立をすすめている。
個別情報の提供に関しては、治療 Phase の異なる時空を超えた患者同士の交わりの場、つまり、外来患者が入院患者へ情報を提供する場として病院ごとの院内患者会の設立を進めている。現在7つ(東京女子医大、東大病院、駒込病院、虎の門病院、日立総合病院、筑波記念病院、倉敷中央病院)設立した。更に、2006年11月より院内患者会世話人連絡協議会を組織し、その中で院内患者会設立マニュアルの作成し、2007年2月に全国に配布した。この協議会からマニュアルなどを用いて院内患者会の設立をサポートしていく予定である。現在、設立マニュアルの充実と運営マニュアルの作成を開始している。http://www.medicina-nova.com
Community Facilitated Medicine は、医療者、患者、患者家族が作る最小単位の Community とそれぞれが持つさまざまな Community(例えば、学校、職場、家庭、司法、立法、製薬企業、メディアなど)とのかかわりを考慮しながら、Community 内で生じるコミュニケーション不足の解消を導いたり、Community 同士での問題を調整することである。それを行う役割を担う Facilitator として患者や家族とのカウンセリングを開始した。コミュニケーション不足から主治医に対して不信を抱いた患者と家族のカウンセリングを行い、不信感を解消させることなど実践している。また、Facilitator の育成として2006年6月より毎月セミナーを開催し Facilitator の育成を行っている。
これらの活動を通じ、新しい医療のコミュニティつくりを行っている。 |